割れてしまったお気に入りのお皿が
たった1時間でより美しく蘇る!
ずっと大切にしていたお気に入りのお皿。それが地震により棚から落下して割れてしまいました。
でも簡易金継ぎという修復方法で、ただの破片だったお皿がより美しい姿で生まれ変わりました!
今回の記事では簡易金継ぎと金継ぎの違いや選んだ理由、簡易金継ぎの詳しい手順を丁寧にご紹介します!
今回ご紹介する簡易金継ぎでは、あまり一般的ではない世界初の紫外線で固まる液体プラスチックを使うことで、最短の乾燥時間での修復を実現しました!
この記事を書いている私は、デザイナー歴20年。アートディレクターとしてデザイン業界で働きながら、ライフスタイルブログ「LIVINGSKAPE-リビングスケープ-」、その他にもお金のブログ「MONEYDOSCOPE-マネードスコープ-」や子育てブログ「dotmomdad-ドットマムダッド-」を運営。Instagramのインテリアアカウントは現在フォロワー10万人。インテリアコーディネートやライフスタイルに役立つ情報を発信しています。
【結論】砕けたお皿が新たな価値を持って生まれ変わる!鑑賞用として飾るなら簡易金継ぎで問題なし!
私は作家さんの美しいお皿を集めるのが趣味で、購入したお皿は食器としては使わず、棚にディスプレイしていました。
それが先日起こった地震によって無残にも粉々に砕けてしまったんです…泣
一度は捨てようと、割れたお皿を袋に入れてゴミ箱へ。そんな時、Instagramのフォロワーさんから「金継ぎという方法がありますよ」と教えて頂いたことをきっかけに今回、伝統的な本漆金継ぎではなく、「簡易金継ぎ」という方法を選び、復元に成功しました!
金継ぎってとても難しいイメージがありますが、簡易金継ぎは超簡単!しかも1〜2時間程度で完成します。
ただし、本来の金継ぎと簡易金継ぎでは、色々と異なる部分があるので、その違いを理解した上でベストな方法を選択することが大切です。
この後、なぜ私が簡易金継ぎを選んだのかも含めて、簡易金継ぎのやり方を詳しくご紹介します。
伝統的な金継ぎとは?
「金継ぎ(きんつぎ)」は「金繕い(きんつくろい)」とも呼ばれる古くから行われている補修技術です。伝統的な金継ぎは、食器の割れや欠け、ヒビなどの破損を「漆(うるし)」を使って接着し、仕上げに金や銀などの金属粉で装飾します。
接着に自然由来の素材である「漆」を使うため安全性が高く、通常の食器として食事に使うことができます。
今回行った「簡易金継ぎ」とは?
今回行う簡易金継ぎとは、合成材料である「新漆(しんうるし)」を使った簡易的な修復方法です(なんちゃって金継ぎや金継ぎ風とも呼ばれます)。
新漆と名が付いていますが、実は漆の成分は含まれていません。植物性の樹液を主原料として「漆っぽく見える」ように調合された合成塗料です。
一般的に破片の接着にはエポキシ接着剤などを使い、新漆と真鍮粉を混ぜた塗料で金継ぎ風塗装をして仕上げます。本物の漆を使わないため、かぶれる心配がなく、短時間での修復が可能です。
ただし、本漆を使った金継ぎと大きく異なる点は「食器として使えなくなる」という点。簡易金継ぎは接着剤や合成塗料などの「工業用品」を使用しているため、食器として使用すること(食べ物を入れる・口を付ける)は基本的に推奨できません。
ですから、「普段の食器として使いたい!」という方はこの時点で今回ご紹介する「簡易金継ぎ」ではなく、伝統的な本漆金継ぎ、もしくは簡漆金継ぎを選択してください。
簡漆金継ぎとは、欠片の接着には合成樹脂を使用しますが、最後の塗り部分には本漆を使って仕上げる現代的な金継ぎです。本漆金継ぎと簡易金継ぎのハイブリッドという感じです。
本漆金継ぎをやりたい方におすすめの本とキット
初めは私も本漆金継ぎを行おうと色々情報を集めていました。その中で実際に購入した本と、本漆金継ぎをやるならコレを買おうと思っていたキットをご紹介します。
これは本漆金継ぎのやり方がとても分かりやすく丁寧に書いてあって、金継ぎを初めて行う人に最適な本だと思います。割れや欠け、ほつれなど、器の状態に合わせて最適な金継ぎの方法がイラスト入りで詳しく書かれています。
本漆金継ぎに必要な道具一式がすべて入っているのでこれ一つ買えば大丈夫!Amazonでの評価も高いので安心です。
なぜ「簡易金継ぎ」を選んだのか
「食器として使えないのになんで簡易金継ぎを選んだの?」と思う方も多いと思うのですが、私が今回、簡易金継ぎを選んだ理由は3つあります。
- 食器として使わない「鑑賞用」だった
- 漆かぶれが怖かった
- 短時間で完成させたかった
ひとつずつご説明します。
【理由1】食器として使わない「鑑賞用」だった
簡易金継ぎの1番のデメリットは、「食べ物を乗せられなくなること」。前述した通り、工業用品を使って接着するため、安全性が証明されていないからです。
サイトによっては水分のない乾き物などであれば問題ない、と書かれているものもありますが、基本的には食器として使えないものと思った方が良さそうです。
ただ、私の場合は初めから食器としてではなく、飾っていた鑑賞用のお皿だったので、わざわざ手間のかかる本漆を使った金継ぎを行う理由がありませんでした。
【理由2】漆かぶれが怖かった
漆は皮膚に付くと人によってはかなりかぶれます。その原因は主成分のウルシオール。症状として、皮膚に付いて数時間から一週間程度の潜伏期があり、瞼や首、手足、腹部などの皮膚がやわらかい部分に痒みを伴った小水疱疹ができます。
漆はカブれる、という知識はテレビなどで見ていたのである程度知ってはいましたが、症状が想像以上でした。ついた部分だけが痒くなる程度と思っていたら全身に現れるほど強い症状のようです。
手袋をして作業するにしても、何かの不手際で皮膚につく可能性はゼロではありません。そのリスクを考えると出来るだけ本漆は使いたくない、と思ってしまいました。
【理由3】短時間で完成させたかった
本漆を使った金継ぎは、漆によるカブれのリスクはありますが、完成した食器は修復前と変わらずに料理を盛って食事に使用することができる、安全性の高いとても優秀な修復方法です。
ただし、ひとつだけ厄介なことがあります。それさ「乾燥時間の長さ」です。
漆は空気中の水分から酸素を取り込んで硬くなる(乾くために湿度が必要)性質があるため、乾くのに数時間から数日を要します。
そのため、1つの作業手順ごとに時間がかかり、出来上がりまでに2週間〜1ヶ月以上掛かります(季節により異なります)。
伝統的な金継ぎの流れと掛かる期間
- 割れた面に漆を塗り乾かす(1日程度)
- 割れをムギ漆で接着して乾かす(2週間以上)
- 表面を削って整え、漆を塗って乾かす(1日程度)
- 仕上げに漆を塗り、上から金粉を振りかけ乾いたら完成
しかも乾かす際は湿度が必要なので、「漆室(うるしむろ)又は漆風呂」と呼ばれる木箱の中で温度・湿度をコントロールをしながら乾燥させる必要があります。自宅で乾燥させる場合は、段ボールで代用します。段ボールの中に湿度計を入れて、全体を霧吹きで湿らせて、漆を乾燥させるのに最適な温度20〜25℃、湿度70〜85%を維持してしっかり乾燥させます。
私はせっかちなので、早く完成させたかったのと、漆室の湿度調整をしっかり出来る自信がありませんでした。
もし本気で本漆金継ぎをやりたい場合
おすすめは乾燥の工程をプロが管理してくれる「金継ぎワークショップ」に参加するのが一番安心だと思います。
一番大きな判断基準は「食器として使うか」ということ
上記3つの理由で私は本漆金継ぎではなく、簡易金継ぎを選んだのですが、一番大きな理由は「食器として食事に使わない」ということです。この部分をクリアしていない場合は、食事にも使える本漆金継ぎ、もしくは簡漆金継ぎを選択してください。
もし食器として食事に使いたい場合は今回ご紹介する最短簡易金継ぎではなく、安全なこちらの簡易金継ぎキットがおすすめです。
使用している合成樹脂が「食品衛生法に適合しているもの」を使用しているので安心です。
【最短】簡易金継ぎに使うもの
今回私が行った簡易金継ぎに使うものは以下の6つです。
一番左のダイソーのダイヤモンドやすりは使いにくかったので、結局自宅にあった紙やすりを使いました笑
ひとつずつご紹介します。
BONDIC 液体プラスチック接着剤
今回私が行った簡易金継ぎが1時間で完成できる秘密はコレ!通常、簡易金継ぎには破片の接着にエポキシ接着剤を使います。
ただ、その方法だと乾くまでに時間が掛かるので、ズレないように破片をマステで固定する必要があります。また、完璧に乾くまでに30分程度掛かってしまいます。
でもBONDIC液体プラスチック接着剤は、UVライトを4秒当てるだけでカチカチに固まります!
UVライトを当てるまでは粘着力はないので付け直しも簡単!破片が細かくても端からどんどん接着していけるのでマステで固定する必要もありません!
SANKOウルシ/うすめ液
サンコーのうるしですが、商品名にうるしと付いていますが、漆ではなく「新漆」と呼ばれる【合成樹脂】です。真鍮粉もついているのでこれだけで仕上げの金塗装ができます。
うすめ液はいわゆる「テレピン油」というもので、油絵具の粘度を調整するのに使われるもの。簡易金継ぎでは、新漆の粘度を調整したり、筆を洗うのに使用します。
面相筆(竹串でもいけるかも)
私も金継ぎをやるのは初めてだったので、どのくらいの太さの筆が最適なのか分からず、「他にも使えるかな」と思ってたくさん筆が入っているセットを購入しました。
結局使ったのは一番細い「000番」の筆だけでした笑
使ってみて分かったのですが、金塗装をする際は「筆で線を引く」というよりは「筆の先に塗料を貯めてチョンチョンと置いていく」感じの方がメリハリのある線に仕上がったので、筆じゃなくて竹串でもいけたかも。むしろ竹串の方がカッコいい線が引けたような気がします。現に塗装に使った太さ000の筆の先は竹串くらいの細さでした!
デザインナイフ/やすり
カッターナイフははみ出た接着剤を剥がすのに使い、やすりは接着がすべて終わって塗装を始める前に仕上げで使います。
デザインナイフではなく普通のカッターでも問題ないですが、デザインナイフの方が細かい作業ができるのでおすすめ。やすりは何となくダイヤモンドやすりの方が使いやすいかなと思ってダイソーで一緒に買ったのですが、超使いづらくて結局紙やすりを使いました笑
それでは簡易金継ぎをやってみます!
それでは早速簡易金継ぎをはじめていきたいと思います!
1.破片を接着する
まずはお皿の破片を並べます。
完成形をイメージして破片を並べて、どこから接着していくかを決めます。
この接着剤を使うのもはじめてだったので、とりあえず一番小さい破片から接着してみます。
破片の断面にたっぷりと接着剤を塗ります。
先端がボールペンのようになっているのでとても塗りやすいです。
UVライトを当てて硬化させるため、接着剤が断面からはみ出ていないと硬化反応が起きません。またはみ出て硬化させることでつなぎ合わせた際の隙間を埋める効果もあります。
たっぷり塗ったら破片の断面同士を合わせてUVライトを当てていきます。目安は4秒間。青く光っている範囲に4秒間づつ照射するイメージでライトを当てていきます。
分かりますか?破片から手を離しているのにもう硬化しているので落ちないんです!かなり驚き!
裏側も忘れずにUVライトを照射します。
写真だと分かりませんが、カチカチに固まってます!!
他の破片も同じ要領で接着していきます。
すぐに固まるのでどんどん接着作業が進められます!
本当にしっかりくっ付いているのか心配だったので、力を込めて折り曲げようとしてみましたが…
まったくビクともしませんでした!!BONDICすごい。。
破片同士をつなぎ合わせてからさらに接着させる場合は、断面からはみ出た接着剤をナイフで削ってください。
そうしないとはみ出た接着剤の厚みの分、つなぎ目に隙間が出来てしまいます。
こういう欠けてしまって破片もない場合は、一般的にはエポキシパテで埋めるのですが、BONDICの場合はその必要はありません。
接着剤で欠けた部分を埋めて
UVライトで硬化させるだけ!
これだけで欠けた部分の復元が可能です!
破片すべての接着が完了しました!
そしたらはみ出た接着剤をナイフで削っていきます。
はみ出ている接着剤にナイフの先端を差し込むと、
こんな感じで簡単にポロッと剥がれて綺麗になります。
他の部分も同じく削り取っていきます。
これで接着完了です!
接合面が少しズレて隙間が出来ている箇所もありますが、最後に金塗装するので問題ありません。
細かく欠けてしまっている部分は、同じく接着剤を流し込んで硬化。仕上げにやすりをかけています。
普通はこの状態で30-1時間程度乾かす必要がありますが、BONDICの場合はもう完全に乾いているのでこのまま金塗装に進みます!
2.ひび割れ部分を金色に塗装する
使うのは新漆と真鍮粉、それからパレット的なもの。
本来は竹ベラを使うのですが、金継ぎ用に購入するのもアレなので家にあるもので代用します。
ポテトチップスの蓋とアイスのスプーン!
スプーンは木のものでも、なければ割り箸でも大丈夫です。ポテトチップスの蓋も新漆が混ぜられれば何でもいいのでラップやアルミホイル、クリアファイルの上でも問題ありません。
フタの上に新漆を出します。
新漆には漆の成分は入っていないので素手で大丈夫です。ただし、匂いが結構キツいので、気持ち悪くならないように換気しながらやりましょう。
そこに真鍮粉を適当に撒きながら混ぜていきます。
混ぜてみて金色の感じが薄かったら足してください。私も超適当にやりましたがいい感じにできました。
ちなみに、終わってから分かりましたが、これだと新漆の量が多すぎたみたいで、半分以上使わずに捨てることになったので、この半分以下の量で十分です。
使った面相筆は一番細い000番。もはや筆じゃなくてもいいくらいです。
竹串や爪楊枝の方が上手に線が引ける気がします。
試しに少し線を引いてみました。
試してみて分かったのが、絵の具のように筆に含ませて線を引くと、塗料の厚みが出ずに薄い感じになってしまって、あまり「金継ぎ」っぽい感じになりません。
そこで、こんな感じで筆先にたっぷり塗料を貯めて、チョンチョンと割れ目に置いていくような感じで書くと、細い線が引けて、さらに塗料に厚みがでて金継ぎっぽい感じになります。
なので多分筆よりも竹串の方が繊細な線が引ける気がします!
コツを掴んだのでどんどん線を引いていきます。全部の線が均一の太さになるとカッコ悪いので、太いところと細いところのメリハリをつけるイメージで線を引いていきます。
欠けていた部分を接着剤で埋めた部分もしっかり金塗装します。
一度コツを掴んでしまえば作業はかなりあっという間に終わります!
やっていて気づいた金継ぎっぽく見せるポイントは以下の3つ。
- 細い線と太い線でメリハリを付ける
- 割れ目がぶつかる「T字」の部分に塗料の「貯め」を作る
- 塗料は「塗る」のではなく「置く」ような感覚で厚みを出す
この3つを意識すると、なんかいい感じになりました!
そんなこんなで完成しました!!
初めてにしてはなかなか上出来ではないでしょうか!
塗料が完全に乾くには少し時間が掛かるので、どこか適当な場所に半日〜1日程度置いておきましょう。
ちなみに塗料はこんなに余ったので、本当にちょっとだけで十分です。
足りなかったら足せばいいだけですが、少なすぎると粘度がすぐに高くなりそうなので、この半分くらいの量で十分だと思います。
3.後片付け
最後に面相筆を洗います。水で洗っても塗料は落ちないので薄め液で濯ぎます。
ペットボトルのキャップに薄め液を少し入れて濯げばOKです。
濯いで時々ティッシュで拭き取って、金色が付かなくなるまで濯ぎましょう。塗料が残っていると筆がカチカチに固まってしまうので根本までしっかり落としてください。
最後にティッシュで薄め液を拭き取っておしまいです。
簡易金継ぎが完成しました!
開始から約1時間であんなにバラバラに割れていたお皿がより美しくなって蘇りました!
初めてやったにしては上出来です。上手く出来るか心配でしたが、筆入れはコツさえ掴めば簡単でした!
無作為に入ったひび割れが、むしろ芸術的にさえ見えます。
金継ぎを行った人は、よく「以前よりも愛着が湧く」と言いますが、本当でした!なんだか完全にオリジナルデザインのお皿を手に入れた感じで、大切にしたい気持ちがより強くなりました。
ちなみに夜は照明を反射してより美しく輝きます。
最後に
今回は簡易金継ぎと金継ぎの違いや選んだ理由、簡易金継ぎの詳しい手順を丁寧にご紹介してきましたがいかがだったでしょうか。これから簡易金継ぎをやろうとしている方の参考になれば嬉しいです。最後までお読みいただきありがとうございました。